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2023.06.19

地震に強い家づくりを目指して
耐震性能の「見える化」ができる!ウォールスタットとは

ウォールスタットは、京都大学防災研究所が開発した木造住宅の耐震性能をシミュレーションできるソフトウェアです。木造住宅の平面図や立面図、使用する木材の種類や断面積などの情報を入力することで、地震が発生した場合の住宅の倒壊や損傷をパソコン上でシミュレーションすることができます。 

ウォールスタットは、木造住宅の耐震性能を評価するツールとして、広く利用されています。SAKABE DESIGNでもウォールスタットを使用して、設計した住宅の耐震性能を評価することができます。また、既存の住宅でも、ウォールスタットを使用して、自宅の耐震性能を評価することができます。 

ウォールスタットは、地震に備えた安全な家づくりを目指す上で、木造住宅の耐震性能を向上させるための有効なツールです。 

今回はこのウォールスタットという技術について、説明していきます。 

南海トラフ大地震に備えて

地震大国日本と呼ばれるように、日本では定期的に大きな地震が起こっています。阪神大震災、東日本大地震、熊本地震などは大災害となり記憶にも残っている方が多いかもしれません。その他にも、全国各地で震度3〜4の地震は頻繁に起きているのです。自然災害は人間の力では、どうすることもできません。ただし、地震災害を防ぐ防災は可能です。日頃から、地震の知識を、避難対策やこれから家を建てる人は、地震に強い家づくりは必須となります。 

近年では南海トラフ大地震と呼ばれる、マグニチュード8~9クラスの地震が30年以内に、確率としては70~80%で発生するといわれています。

建築基準法を守るだけでは、大きな地震に備えることができず、建物は倒壊、崩壊してしまうことは、過去の地震の経験から立証済みなのです。 

それでは、どうすればよいか? 

耐震性能の高い家づくりをしていくことが、地震対策としては重要となってきます。 

地震に強い住宅 耐震等級とは

耐震等級は、建物や構造物の耐震性能を評価するための指標です。地震が発生した際に建物がどれだけ被害を受けるか、またはどれだけ安全であるかを示す基準として利用されます。 

耐震等級は一般的に、耐震性能を数値化して表現することで、建物や構造物の設計や改修に関する基準となります。耐震等級の評価は、地震の発生頻度や規模、地盤の状態などの要素を考慮して行われます。 

耐震等級は、通常、1から5の数値で表されます。数値が高いほど、建物の耐震性能が高くなります。以下は一般的な耐震等級の目安です。 

  • 耐震等級1:比較的低い耐震性能を持つ建物。地震による揺れに対して脆弱であり、小規模な地震でも被害を受ける可能性が高い。建築基準法の最低ライン。 
  • 耐震等級2:一般的な住宅などの基準となる耐震性能。建築基準法の1.25倍の強さ。 
  • 耐震等級3:一般的な公共建築物や商業施設などの基準となる耐震性能。建築基準法の1.5倍の強さ。 

耐震等級は、建物の設計や改修時に耐震基準として参考にされます。各国や地域によって異なる基準が存在し、法律や建築規格によって定められています。また、耐震等級は地震の予測や評価の進化に伴い、定期的に見直されることがあります。 

建築基準法を守るだけでは、建物は倒壊し、家族の命も危険にさらされます。地震に強い住宅を目指すなら、通常の建築基準よりも強固で頑丈な耐震等級3以上が望ましいです。 

ウォールスタットによる耐震性能の見える化 

ウォールスタットでは、これから建てようと考えている住宅、また既存住宅が地震にどのように耐えうるかをパソコン上でシミュレーションすることができます。 
これまで大規模な振動台実験で行われていたことが、パソコン上で見える化できるようになりました。 

損傷度合いなどは、色の変化で見ることができます。また、どういう地震の時のどのように揺れるのかを挙動で確認することができます。 

このようにして、シミュレーションし検証した結果をもとに、重心(建物の重さの中心)と剛心(建物の強さの中心)のバランスを取りながら、さらに強く頑丈な建物にしていくことができるのです。 

ウォールスタットでの検証

ここでは、一般的な耐震等級3の設計と、ウォールスタットで検証し修正した耐震等級3の設計で、地震に対する揺れがどのように変わってくるかの実験を行いました。 

下の図は、阪神淡路大震災と同じ震度で、一般的な耐震等級3の設計(PLAN1)とウォールスタットで検証し、修正した耐震等級3の設計(PLAN2)を比較したものです。地震の揺れの衝撃を5回連続で繰り返し与え、損傷部がどのように変化するのかを実験しました。

実験を重ねていくごとに、損傷部分に差が出てきています。ウォールスタットで検証し修正した方の設計(PLAN2)が、一般的な耐震等級3(PLAN1)の設計に比べて、損傷部分が小さいことがわかります。PLAN2では損傷度合いの高い赤い部分は見当たりません。よって、同じ耐震等級3の設計でも、ウォールスタットで検証し修正したものが、一般的な耐震等級3より安全だということがわかってきました。 

家族の命を守るために

必ず起こるといわれている南海トラフ大地震。特に愛知県では甚大な被害が想定されています。これから家づくりを検討されている方は、地震に強い家を設計し、建てることが、家族の命を守ることにもつながります。その際にウォールスタットを活用することで、住宅の耐震性能を評価し、適切な対策を講じることができます。
ただし、ウォールスタットの結果は一部を評価するものであり、災害時の損害を補償するものではありません。しかし、耐震性能を向上させるツールとしては非常に有効なものです。SAKABE DESIGNは、ウォールスタットを使用して、耐震性能の「見える化」をお客様と共に確認し、安心で安全な家づくりを目指していきたいと思います。