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2023.06.01

自然と調和し快適な住まいを実現するパッシブデザイン住宅  

パッシブデザインとは、建築物の外皮や配置、窓の配置、断熱性能などを最適化することで、自然エネルギー(光や風、熱など)を最大限に利用し、快適な室内環境を実現する住宅設計手法のことです。つまり、冷暖房や照明などの機械的な設備を最小限に抑え、自然の力を利用することでエネルギー消費を抑え、環境に優しい住宅を実現することができます。太陽光や風を取り入れ、断熱性能に優れた外皮を備えることで、機械的な設備を最小限に抑え、環境に優しい住まいを実現します。自然の力を最大限に活用し、住まいと地球環境を共存させるパッシブデザイン住宅は、持続可能な未来を実現するための選択肢の一つです。 

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パッシブデザイン住宅の設備の特徴     

それでは、パッシブデザイン住宅にはどのような特徴があるのでしょうか?具体的に見ていきましょう。 

断熱性能

パッシブデザイン住宅は、外皮の断熱性能を高めることで、熱損失を最小限に抑えます。厚い断熱材を使用した壁や屋根、窓枠などを備えることで、外気温から室内温度を守り、冷暖房のエネルギー消費を減らします。
 
外皮の断熱性能は、建物の壁、屋根、床、窓などの外側に施された断熱材の性能を指します。外皮の断熱性能が高いほど、室内温度を一定に保ちやすくなり、快適な室内環境を実現することができます。 

主な断熱材としては、グラスウール、ロックウール、発泡ウレタン、セルロースファイバー、軽量気泡コンクリートなどがあります。どの断熱材を使用するかは、建物の構造や予算などを考慮して、施工会社と相談するのが良いでしょう。 

外皮の断熱性能を向上させるためには、断熱材の厚みや種類、施工方法に加え、気密性を高めることも重要です。外気からの風や熱を遮断することで、断熱材の性能を最大限に引き出すことができます。例えば、窓枠や玄関ドアなどの建具の密着性を高め、外気の侵入を防ぐことが大切です。 
また、断熱性能を高めるだけでなく、夏場には遮熱性能も重要です。太陽光線を遮ることで、室内温度の上昇を抑えることができます。遮熱性能を高めるためには、外部に突き出した部分や窓などに、遮熱シートや日よけなどの設備を取り付けることが有効です。 
外皮の断熱性能を向上させることで、快適な室内環境を実現するだけでなく、省エネ効果を発揮し、環境にも配慮した住宅を実現することができます。 

日射制御 

窓の配置や開口部の大きさを調整することで、日射を適度に取り入れ、快適な室内環境を実現します。太陽光線の熱や光を制御することで、建物内部の温度や照度を調整することができ、特に夏季には、建物内部の熱が蓄積されることで室温が上昇し、冷房の消費エネルギーが増加するため、日射制御が重要となります。 

日射制御の手法には、いくつかの方法があります。 

まずは遮光性の高いブラインドやシェードを窓に設置することで、太陽光の熱や光を制御します。また、遮光材料の種類や設置場所、開閉方法を工夫することで、季節や時間帯に応じた遮光効果を得ることができます。 
また、窓のガラスやフレームに断熱材を使用することで、室内と外気との熱の伝わりを防ぎ、窓の断熱性能が向上し、室内温度を安定させることができます。 
逆に冬場には太陽光の熱を利用して、建物内部を暖めることができます。日射熱利用は、太陽光熱貯蔵壁や、太陽光集熱パネルなどを使用することで実現できます。
 
夏季の日射による建物内部の温度上昇を抑制し、また冬季には日射熱を利用して快適な室内環境を実現することができます。また、日射制御によって、エネルギー消費量を削減し、省エネ効果を高めることもできます。 

昼光利用

建物内に自然光を取り込み、室内の照明や電気使用量を減らすことで省エネ効果を高める手法です。自然光は、人間にとって快適な環境を作り出すだけでなく、住宅のエネルギー消費を削減することができます。 

昼光利用は、大きな窓を設置し、自然光を室内に取り込むことができます。また、窓の設置場所やサイズ、方向などを工夫することで、日射量を調整することもできます。 
人感センサーや照度センサーを用いて、室内の明るさを自動的に調整することで、昼光を最大限に活用しながら、室内の快適性を保つことができます。 
また、自然光を反射・拡散することで、室内全体に均等に光を行き渡らせることができます。反射・拡散材料として、特殊なコーティングを施したガラスや、天井に反射材を取り付けることができます。 

昼光利用によって、建物内の照明や電気使用量を削減するだけでなく、自然光による快適な環境を実現することができます。しかし、昼光の利用には、日射量や日射角度、季節や天候などの自然条件による影響を受けるため、設計や管理が重要となります。

自然換気と空気循環

自然換気を重視することで、室内の空気循環を改善します。熱や湿気を逃がすための換気口や通風孔を設置し、風を利用して室内の空気を循環させます。 

パッシブデザイン住宅における自然換気と空気循環は、建物内部の空気質や快適性に大きく影響します。自然換気とは、風や温度差を利用して、室内の空気を入れ替えることです。建物内部には、湿気や化学物質などが蓄積されるため、定期的に入れ替えることが必要です。自然換気は、エアコンや換気扇などの機械を使わず、自然の風や気流を利用するため、省エネで環境にも優しい方法です。 

自然換気を実現するためには、具体的に窓やドアの配置を工夫したり、窓を開放することで、外気を取り入れることができます。また、室内の空気を排出するために、逆流防止のための換気口を設けることも効果的です。 

建物内部に通風路を確保すれば、風を導くこともできます。通風路は、屋根裏や壁裏に通路を設けることで、室内の空気を効果的に循環させることができます。空気循環は、自然換気の一環として行われることが多く、室内の空気を均一に循環させることが目的です。建物内部には、熱の移動によって温度差が生じ、暖かい空気や冷たい空気が集まる傾向があります。空気循環を促すことで、このような温度差を抑制し、室内の温度を一定に保ちます。 

空気循環を促すために、工夫できることは天井を高く設計することで、熱の上昇や寒気のたまりにくい空間をつくることができます。 
シーリングファンの利用も効果的です。自然換気だけでは、室内の空気を効率的に循環させることができない場合もあるため、ファンを利用することで、室内の空気を強制的に循環させることができます。ただし、ファンを使う場合は、電力を消費するため、エネルギー消費量には注意が必要です。 

自然換気と空気循環は、パッシブデザイン住宅において重要な役割を果たします。これらの工夫を行うことで、快適で健康的な室内環境を実現することができます。 

太陽光発電システム

太陽光発電システムもパッシブデザイン住宅の特徴的な設備です。太陽光パネルを設置し、自然のエネルギーを電気に変換して利用することで、電力消費量を削減します。 

太陽光発電システムは、太陽光を利用して電力を生成する仕組みです。屋根や壁面に設置された太陽光パネルが太陽の光を受けて直流電力を生成し、変換装置によって交流電力に変換されます。この太陽光発電システムは、再生可能エネルギー源である太陽光を利用するため、環境に優しく、二酸化炭素の排出量を削減することができます。そのため、地球環境に負荷をかけることなく電力を生成できます。 

環境に配慮した素材

環境に配慮した素材を使用することが一般的です。例えば、天然素材やリサイクル素材を使った建材や内装材を採用し、環境負荷を抑えます。 

木材、竹、石、土、わらなどの自然素材は、再生可能であり、環境に優しい素材です。また、建材としての性能も高く、調湿性や断熱性に優れていることが多いです。また、古い建物や廃材を再利用することで、リサイクルに配慮した素材として利用することができます。例えば、廃材を集めて作られたレンガや、古い建物の木材を利用したフローリングなどがあります。 

断熱性能の向上に断熱材には、環境に優しい素材が適しています。代表的な素材としては、セルロースファイバー、グラスウール、ロックウール、木繊維板などがあります。 

建材から発生する化学物質であるVOC(※)は、揮発性有機化合物のことです。VOCの発生を抑制する低VOC素材は、揮発性有機化合物の発生量が少なく、室内環境にやさしい素材です。例えば、塗料や接着剤には、低VOC素材が利用されます。 

(※) 
揮発性有機化合物のことをVOC(Volatile Organic Compounds)の略称で呼びます。蒸発しやすく(揮発性といいます)、大気中で気体となる有機化合物(化学物質)の総称です。(出典:東京都環境局

いかがでしたか?パッシブデザイン住宅は、自然の恩恵を最大限に活用し、省エネルギーかつ環境に優しい住宅です。快適な居住空間を提供するために、建物の外皮や窓、換気など、様々な要素が計画的にデザインされています。また、環境に配慮した素材や設備が採用され、持続可能な住宅を実現しています。暮らしに必要なエネルギーを極力削減し、地球環境を守りながら、快適な生活を実現するパッシブデザイン住宅は、今後ますます需要が高まることが予想されます。